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ちっちゃなお部屋

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小説『椿姫』と『マノン・レスコー』

『椿姫』と『マノン・レスコー』の悲劇の同類性


小説『椿姫』の、椿姫ことマルグリット・ゴーチェは、実在した人物がモデルとなっています。作者ドュマ・フィスは、かの有名な『三銃士』の作者アレキサンドル・デュマの息子さんです。
時代は丁度19世紀の中ごろでしょうか。物語の語り手となる男性が、とある女主人死後、彼女の館内の競売にて一冊の本を競り落とした事から物語は、始まります。その本が、『マノン・レスコー』(アベ・プレヴォ―作)なのです。椿姫の主人公の女性が、かつての恋人から『マノン・レスコー』の本を贈られていたのです。しかも、憎々しくも『マノンをマルグリットに贈る。つつましやかなれ』と、贈り主からのメッセージが書き込まれているのです。
さて、ここで気になってくるのは内容でしょうが、それは、関心ある方が是非自分でお読み下さい。
ただ、この2作の共通した内容が、あります。

1.主人公の女性が、高官娼婦ある。
(囲うにも、邸宅を用意してあげて、彼女の生きている生活レベルを維持してあげねばならない。)

2.いずれも、将来結婚する相手として、認めてもらえない。
(当時は、男性の女性遍歴は、一種のダンディズムでもあり、スマートに付き合っていれば、夫婦共々互いの浮気は目を瞑る事が多かった。自由恋愛結婚よりも、家同士の結婚で互いの財を増やしてきているのだから。女性は、親のひごのもとにある限る財産の自由は無く、夫を持って初めてある種の自由を得たらしいです。)

3.男性は、高官娼婦の彼女らを囲うほどの器量も財も無く、堕落の一途。
女性が真剣に相手を愛せば愛するほど、相手の財力に頼っていられなくなり、彼には秘密に泣く泣く身を引く。
(しかし、これは、身を引くと言うよりも、男性の気持ちをきっぱり諦めさせるために、いかにも『あなたでは、私を囲えない。財の無いあなたとはもういられない』と言うかのごとく、別の男性、お金持ちの年配者の元に戻っていくのです。)

4.結局女性は、最後は恋人の心に戻るが、まっているのは『死』です。
しかも衰弱して死んでいくのです。

この作品群、悲恋です。
当時は、このような作風が好まれたのでしょうか?
でも、裕福でない地位の無い女性が、一人生きていこうとすると、彼女らのように娼婦に道を歩まねばならぬことも多々あったようです。
今のような、色々な選択を与えられた時代では、到底生まれぬ物語かと思います。

後で知ったのですが、「椿姫」のモデルであったマリ・デュプシレの愛読書は本当に「マノン・レスコー」だったそうです。
それは、作家自身も知っていたことでした。

私と「椿姫」の出会いの一冊。
マリア・カラスの全幕。ライブの熱狂が伝わります。若造アルフレードが、ヴィオレッタをなじるシーンで、観客席からのどよめきが聞こえます。



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